- 2016/02/14
- 雑誌の付録の制作業務の委託契約において、付録の瑕疵が認められるとして、制作業者の瑕疵担保責任を認めた事例 東京地判平成27年5月11日判時第2276号71頁
事案の概要 | 出版社Xは、自ら発行する雑誌Aにつける付録の制作を、雑貨・布製品等の制作を業とするY社に依頼した。両社間では、Y社はX社から委託されて制作した付録につき、X社が定める検査基準に合致すること及び付録の品質、商品性及び使途に対する適性を保証する旨の瑕疵担保責任を負うことや、契約解除及び解除の際の損害賠償に関する事項等を内容とする基本契約が締結されており、また、問題となった平成25年6月号の付録については、個別契約の中で、目的物の材質・デザイン・品質・梱包方法・納期などについて具体的に定められていた。
しかし、Y社は同月号の付録の制作・引渡しの納期が遅れ、そのために、X社は、付録を含む雑誌を店頭に置くための流通に載せる期日と付録のX社への納入時期との間に納品された当該付録を検査する期間がほとんどないままに商品を発送することになった。 付録には、絵柄のサイズが本来のものよりも小さいもの、絵柄の色が異なるもの、使用された素材が異なるものがあり、このような状態及び品質はX社が当初依頼したものと異なるものであり、また、商品の一部には付録が台紙に貼り付いていたものがあり、このような状態は原告が当初依頼したものと異なるものだった。そして、商品の雑誌を購入した読者からは、付録の材質・寸法・梱包方法につき多数の苦情が寄せられることになり、X社は読者とのトラブルの解決に出捐を要する事態となった。 そこで、X社がY社に対して、基本契約の解除と、既払い代金の返還及び損害賠償を請求した。 |
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コメント | 請負人が仕事の目的物に瑕疵がある場合には瑕疵担保責任(民法634条2項)を負うことになりますが、「瑕疵」の有無の判断基準は、目的物が通常有すべき品質・性能を有するかどうか(客観的瑕疵)、あるいは、当事者が契約で定めた内容に適合しているかどうか(主観的瑕疵)にあるとされています。 本件では、Y社が制作した付録は、X社・Y社間で合意された品質・内容と異なるものだったことから、「瑕疵」があったと認定されており、契約で瑕疵の判断基準を明確に定めておくことの重要性を示唆する判決といえます。 なお、本判決では、Y社の納品が契約で定めた時期よりも遅れ、X社は配本までに付録を検査する時間がなかったため、X社は本件付録のどの程度の割合に瑕疵があるかを調査することは困難だったとして、X社において付録が上記状態及び品質にあることを知りながら配本を止めなかったとの事情をもって、X社が上記状態及び品質の付録を本件個別契約の目的物に変更することを承諾したということはできないと判断されており、この点も実務上参考になります。 |
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見解 |
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備考 |
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