実作業に従事していない仮眠時間と労働基準法上の労働時間(最高裁判所平成14年2月28日・民集 56巻2号361頁)|企業法務|法律事例/判例集

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病院・医療法務

2016/02/26
実作業に従事していない仮眠時間と労働基準法上の労働時間(最高裁判所平成14年2月28日・民集 56巻2号361頁)
事案の要旨
ビル管理会社Yの技術系従業員であるXらが、Yに対し、いわゆる泊り勤務の間に設定されている連続七時間ないし九時間の仮眠時間(以下「本件仮眠時間」という。)が労働時間に当たるのに、泊り勤務手当並びに本件仮眠時間中の実作業時間に対する時間外勤務手当及び深夜就業手当しか支払われていないとして、昭和63年2月から同年7月までの期間(以下「本件請求期間」という。)における本件仮眠時間について、労働協約、就業規則所定の時間外勤務手当及び深夜就業手当ないし労働基準法(以下「労基法」という。) 37条(所定の時間外割増賃金及び深夜割増賃金の支払を請求した事案である。
判旨不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。

 そこで、本件仮眠時間についてみるに、前記事実関係によれば、Xらは、本件仮眠時間中、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり、実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても、その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないから、本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。したがって、Xらは、本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めてYの指揮命令下に置かれているものであり、本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。
労働契約において本件仮眠時間中の不活動仮眠時間について時間外勤務手当、深夜就業手当を支払うことを定めていないとしても、本件仮眠時間が労基法上の労働時間と評価される以上、Yは本件仮眠時間について労基法13条、 37条に基づいて時間外割増賃金、深夜割増賃金を支払うべき義務がある。

労基法37条所定の割増賃金の基礎となる賃金は、通常の労働時間又は労働日の賃金、すなわち、いわゆる通常の賃金である。この通常の賃金は、当該法定時間外労働ないし深夜労働が、深夜ではない所定労働時間中に行われた場合に支払われるべき賃金であり、Xらについてはその基準賃金を基礎として算定すべきである。この場合、Xらの基準賃金に、同条2項、労働基準法施行規則21条(平成6年労働省令第1号による改正前のもの。)により通常の賃金には算入しないこととされている家族手当、通勤手当等の除外賃金が含まれていればこれを除外すべきこととなる。
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